弥助が目撃した本能寺の変と、信長をめぐる「王の交換」
四百年、日本人が問い続けてきた事件がある。
本作はそれを、この国で唯一「嘘をつく理由のなかった男」の目から描く。
港・武器・銀・人・情報を握る南蛮ネットワークが、信長を天下へ押し上げ、
その力を奪おうとした瞬間、信長は捨てられた。

語り手は、弥助
アフリカから連れてこられ、織田信長の家来となった黒人侍。実在の人物である。本能寺と二条御所の両方で戦い、生き延びた。
日本語はたどたどしい。だから人々は、彼の前で口が軽くなる。誰も彼を、数に入れていなかったからだ。

殺されるのは、織田信長
天下を目前にして、この男は自分を神と呼ばせはじめた。夜空の文様を着て、裸足で歩く。
悪気は、一度もない。だから、誰も赦せない。
容疑者は、三人
明智光秀。高山右近。黒田官兵衛。三人は同じ年、同じ城で、同じ男に、一番大事なものを握られた。
そして誰も、それを口に出せなかった。
殺す値打ちのない者。
斬れば刃が汚れるが、生かしておいても何も起きない者。
——数に、入らぬ者。




